「外国人が介護福祉士になるには、どんなルートがあるの?」
「資格を取得してもらったら受け入れ企業側にどんなメリットがあるのか知りたい」
このような疑問を持つ方もいるでしょう。
介護業界では、外国人材の受け入れが増えており、介護福祉士の資格取得を目指して働く方もたくさんいます。
介護福祉士は国家資格であり、介護に関する専門知識やスキルを証明するものです。外国人が資格を取得すると、利用者の信頼度も高まるため企業にとってもメリットがあります。
外国人の場合、介護福祉士になるためのルートは主に3つです。卒業する学校や持っている在留資格によって選択できるルートが異なります。
本記事では、外国人が介護福祉士になる3つのルートや試験の合格率を解説します。外国人に介護福祉士の資格を取得させる企業側のメリットも紹介しているので、参考にしてみてください。
介護分野における外国人受け入れの現状は?

以下は厚生労働省が公表している資料に掲載されている介護分野の外国人受け入れ実績を示した表です。
在留資格 | 在留者数 |
---|---|
EPA(経済連携協定)(インドネシア・フィリピン・ベトナム) | 3,252人(うち資格取得者452人)※令和7年3月1日時点 |
在留資格「介護」 | 12,227人※令和6年12月末時点 |
技能実習 | 15,909人※令和5年12月末時点 |
特定技能1号 | 44,367人※令和6年12月末時点 |
出典:厚生労働省|外国人介護人材の受入れに関する制度の現況について
介護分野で働ける在留資格(日本に滞在し活動が許可される資格)は4つあり、特に受け入れ実績が多いのが特定技能・技能実習です。
介護分野の特定技能外国人の在留者数は年々増加傾向にあり、2019年から2024年の3年間の間に16人から44,367人まで急増しました。
以下は令和4年度における介護分野の特定技能評価試験を受験した国籍の一部と合格者の数です。※国名のリンクをクリックすると関連記事にジャンプします
参考:厚生労働省|介護分野における外国人の受入実績等
これらの結果から、日本の介護分野では外国人人材の受け入れが拡大していることがわかります。

外国人が介護福祉士になる3つのルート

ここでは、外国人が介護福祉士になる方法を解説します。
主なルートは以下の3つです。
- 日本の介護福祉養成施設を卒業する
- 特定技能や技能実習で3年以上実務経験を積む
- EPA介護福祉士候補者として現場で経験を重ねる
外国人が卒業する学校や持っている在留資格によって、適用されるルートが決まります。
順番に見ていきましょう。
日本の介護福祉養成施設を卒業する
外国人が介護福祉士になるには、在留資格「留学」で入国し、介護福祉士養成施設において2年以上学習し、卒業時に国家試験を受験します。
見事、試験に合格できれば資格を取得できます。介護福祉士の資格登録が済み、在留資格「介護」に切り替えれば、現場での就労が可能です。
なお、介護福祉養成施設に入学する要件として「日本語能力試験N2相当」の日本語スキルを求める学校もあります。

N2とは日常的な場面での日本語だけでなく、幅広い話題について書かれた新聞や雑誌の内容も理解できるレベルです。
特定技能や技能実習で3年以上実務経験を積む
在留資格「特定技能」または「技能実習」の在留資格で、介護施設等で実務経験を3年以上積んだ外国人は介護福祉士国家試験の受験資格を得られます。
そこで試験に合格できれば、介護福祉士の資格を取得できます。
養成施設ルート同様に、資格登録後は在留資格を「介護」に変更します。
なお、2024年の法改正により、2025年度から特定技能外国人は、一定の要件のもとでこれまで認められていなかった訪問系の介護サービスに従事できるようになりました。詳しくは以下の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。


また「特定技能制度における訪問介護解禁の導入スタートガイド」を無料配布しております。1分でダウンロードできるので、下記のボタンをクリックのうえ、どうぞお受け取りください。


この資料でわかること
- 訪問介護解禁の背景・概要
- 外国人材・事業者における要件
- 訪問介護における外国人材の受入れ手続き
- 訪問介護に外国人材を導入するメリット など


EPA介護福祉士候補者として現場で経験を重ねる
EPA介護福祉士候補者とは、経済連携を強化するために、以下3ヵ国と協定を結んで外国人を受け入れる制度です。※国名のリンクをクリックすると関連記事にジャンプします
- インドネシア
- フィリピン
- ベトナム
対象国の外国人は在留資格「特定活動」で介護福祉士候補者として入国します。その後、介護福祉士養成施設において2年以上(※フィリピン人・ベトナムのみ該当)もしくは、介護施設等で実務経験を3年以上積むことで介護福祉士の受験資格が与えられます。
介護福祉士の資格取得後はそのまま在留資格「特定活動」で働き続けられますが、在留資格「介護」に移行も可能です。在留資格「介護」に変更すれば、在留期間の延長や転職の自由度向上といったメリットがあります。
参考:厚生労働省|インドネシア、フィリピン及びベトナムからの外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて
介護福祉士の資格受験における外国人の合格率


公的なデータとしては、在留資格「特定活動(EPA)」における介護福祉士国家試験の試験結果が確認できました。そのため、令和6年における外国人介護福祉士候補者の合格率と合格者数を紹介します。
実施年 | 合格率 | 合格者数 |
---|---|---|
令和6年(第37回) | 76.00% | 456名 |
令和5年(第36回) | 87.10% | 155名 |
令和4年(第35回) | 71.30% | 471名 |
※初受験者の結果
参考:厚生労働省|第36回介護福祉士国家試験におけるEPA介護福祉士候補者の試験結果
令和6年年から過去3年の初受験者における試験結果を見てみると、合格率の幅は約70〜90%です。合格率が年によって大きく変動している背景から、念入りな試験対策が必要だと考えられます。
外国人に介護福祉士の資格を取得させるメリット


外国人に介護福祉士の資格を取得させるとどんなメリットがあるのでしょうか。
主なメリットは以下の3つです。
- 利用者の安心感につながる
- 中堅的な人材として育成できる
- 国や自治体の補助金を活用できる
自社にとってプラスの要素があれば、外国人の資格取得を積極的にサポートしましょう。
利用者の安心感につながる
外国人労働者は文化や言葉の違いから、利用者から以下のような不安を持たれやすいです。
- 仕事が雑なのではないか
- 気持ちを理解してもらえないのではないか
- 介護の知識不足により介助に危険性はないか
介護福祉士の試験に合格したことは、介護に関する知識と技術が身についている証で、利用者の安心感につながります。
資格取得のために努力して勉強した姿勢も評価され、利用者からの信頼も得やすいでしょう。
中堅的な人材として育成できる
介護福祉士の国家試験に合格した者は、介護の知識や実務のスキルを兼ね備えた人物です。
また、在留資格「留学」で介護福祉士養成施設に入学する際や、「特定技能」で在留資格を申請する際には、ある程度の日本語能力が求められます。そのため、日本人スタッフや利用者とも比較的スムーズなコミュニケーションが可能です。



知識・技術・コミュニケーション能力が備わっていれば、外国人労働者をとりまとめる中堅的な人材として育成できます。
補助金・助成金を活用できる
介護分野の外国人を受け入れるサービス事業や施設に対して、補助金を交付している自治体があります。
以下は、介護福祉士の資格取得における支援を目的とした補助金例です。
自治体 | 補助金の内容 |
---|---|
宮城県 | 外国人が介護福祉士の資格取得に必要な取組にかかる費用(教材費・外部講習への参加費など)を一部補助する |
秋田県 | 外国人が介護福祉士の資格取得に必要な取組にかかる費用(教材費・外部講習への参加費など)を一部補助する |
茨城県 | 介護福祉士国家試験に合格するための日本語学習支援に必要な経費の一部を助成する |
参考:宮城県|宮城県外国人介護人材受入施設等環境整備事業費補助金 事業手引き
秋田県|秋田県外国人介護人材受入れ施設等環境整備事業補助金交付要綱
茨城県|令和6年度介護職種技能実習生日本語能力向上支援事業について
あなたの事業所や施設がある自治体で同様の制度がないか確認して、積極的に活用していきましょう。
以下の記事では、外国人雇用をする企業が利用できる助成金を一覧で紹介しています。採用コストを下げる際に役立つので参考にしてみてください。


外国人が介護福祉士に合格するためにサポートするコツ


外国人が介護福祉士に合格するために企業がサポートするコツを3つ解説します。
- テキスト・参考書の購入支援を行う
- 外国人に合った指導方法を探す
- 日本語能力向上のサポートをする
資格取得のメリットを感じている方は、外国人が試験勉強に取り組める環境を整えてあげましょう。
テキスト・参考書の購入支援を行う
テキスト・参考書の購入支援はサポートの一環です。
外国人が日本に来る理由の1つは出稼ぎです。



貯蓄がない状態で来日する場合が多いほか、母国にいる家族に仕送りする外国人もいるため、経済的に余裕がない労働者も少なくありません。
お金の面に不安があると、介護福祉士国家試験対策のテキスト・参考書の購入をためらう外国人も出てくるでしょう。
そのため、企業側が購入費用を一部または全額負担してあげたり、評価の高い教材をリストアップしてあげたりすると資格取得の合格率アップにつながります。
外国人に合った指導方法を探す
介護福祉士の試験に合格するには、現場で実務経験を積んで介護分野における知識や技術の理解を深めなくてはいけません。
どれくらい理解を深められるかは、指導方法によって大きく左右されます。国籍によって国民性や文化的背景が異なるため、同じ指導をしても効果に差が生まれるからです。
そのため、外国人一人ひとりの性格・ペースにあわせたに合わせた個別指導を探してみてください。
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この資料でわかること
- 異文化コミュニケーションの基礎
- 文化の違いや言語の壁を乗り越えるコツ
- 効果的なコミュニケーション方法
- コミュニケーション改善の実践例 など
日本語能力向上のサポートをする
介護福祉士の試験問題は外国人にも日本語で出題されます。
配慮がなされており、外国人の試験問題にはふりがなが振られていますが、文章を理解する日本語能力がなければ解答できません。
そのため、試験までに日本語能力向上に向けた努力が必要です。企業側は以下のようなサポートで外国人の学習を後押しできます。
- 日本語の勉強会を開催する
- 日本語を勉強する時間を確保する
- 日本人スタッフが意識的に話しかける
- 日本語教室をリストアップして紹介する
積極的なサポートにより、外国人スタッフの合格率向上につなげていきましょう。
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外国人の介護福祉士に関するよくある質問


最後に外国人の介護福祉士に関するよくある質問と回答をまとめます。
介護福祉士の試験問題は外国人と日本人で異なりますか?
外国人と日本人で試験内容は変わりません。
ただし、外国人の受験者に対しては、問題にふりがなが振られたり、試験時間が延長されたりなどの配慮があります。
外国人が介護福祉士の国家試験に不合格になった場合はどうなりますか?
在留資格の有効期限内であれば、再受験が可能です。
なお、介護福祉士養成施設を卒業した外国人留学生の場合、経過措置が取られています。
卒業後5年間は、国家試験に不合格でも、または受験しなくても「介護福祉士」として登録はできませんが、介護業務に従事し続けられます。
この期間中に国家試験に合格するか、卒業後5年間連続して介護等の実務に従事することで、正式に介護福祉士の資格を取得できます。
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介護人材が不足している今、外国人が介護福祉士を目指すことは業界全体にとってメリットがあります。
介護現場の信頼性向上や人材の定着を図るうえでも、資格取得は大きな意味を持つでしょう。
本記事で紹介した教育支援のコツを参考に、外国人が介護福祉士の試験に合格できるようサポートしてみてください。
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監修者プロフィール


- 一般社団法人 日本料飲外国人雇用協会 理事 兼 事務局長
- 外食業に特化した求人媒体を運営する人材支援事業会社にて、約20年間に渡り首都圏版メディアの立ち上げや事業責任者として従事。専門学校・短大にて就職セミナー講師としても20校以上の活動経験あり。2019年に特定技能制度の施行開始にあたり、登録支援機関の立ち上げとして「日本料飲外国人雇用協会」に参画。現在は理事 兼 事務局長として活動を所掌している。
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