在留資格「介護」とは?取得要件や在留期間などの違いを資格4種で比較


「介護の在留資格はいくつかあるけど、それぞれの違いは?」
「外国人を採用するにしても、どの在留資格をもつ人を採用すれば良い?」

このような疑問を抱えていないでしょうか?

介護業界の深刻な人材不足に対応するため、多くの施設で外国人材の採用が進んでいます。 しかし、自社の現場には、どの在留資格をもつ外国人を採用すべきかわからず悩む方は少なくありません。

そこで本記事では、介護職で働く外国人が利用できる主な在留資格「介護」「技能実習」「特定技能」「EPA」について、それぞれの特徴や取得要件、在留可能年数などを解説します。

違いを理解したうえで、自社にあった在留資格をもつ外国人の採用を検討していきましょう。

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目次

介護分野で働ける在留資格4種

汎用

外国人が日本で介護職員として働ける在留資格は、以下の4つが用意されています。

日本で介護職員として働ける在留資格
  • 在留資格「介護」
  • 技能実習
  • 特定技能
  • 特定活動「EPA介護福祉士・候補者」

資格ごとの特徴を順番に見ていきましょう。

在留資格「介護」

在留資格「介護」は2017年9月に新設され、外国人が正式に日本国内で介護職として就労できる在留資格として位置づけられています。

令和2年4月1日には在留資格「介護」の上陸基準省令が改正され、介護福祉士の資格を取得したルートを問わず、在留資格「介護」が認められるようになりました。

猪口 裕介

ほかの在留資格とは異なり、日本の介護福祉士国家試験の合格が大前提です。

さらに、合格にあたっては高い日本語能力と専門知識が求められます。

在留資格「介護」による在留期間は3ヵ月、1年、3年、5年のいずれかが付与され、更新回数の上限はありません。職場の雇用契約が継続されていれば長期にわたって在留可能です。

介護福祉士の資格を有するため、老人ホームだけでなく、訪問介護やデイサービスなど、さまざまな介護サービスで即戦力として働けます。

技能実習

技能実習は、外国人技能実習生が介護現場で学びながら実際に働ける在留資格です。

技能実習で在留できる期間は最長5年となっており、契約終了後は基本的に帰国しなければなりません。介護の国家資格が不要で勤務可能であり、実務を通じて介護技術や日本語を習得する仕組みです。

技能実習で従事できるのは特定の施設内業務が中心で、訪問介護業務は認められていません

特定技能

特定技能は、人手不足が深刻な業界で即戦力となる外国人を受け入れるために作られた在留資格です。

介護分野で特定技能を取得して日本で働くには、介護技能評価試験と日本語能力試験の合格が求められます。
特定技能による在留期間は通算で5年間までです。1年、6カ月、または4ヵ月ごとに更新できますが、5年以上は延長できません。

ただし、在留中に介護福祉士国家試験に合格すれば、在留資格を特定技能から「介護」に変更できます。変更後は在留期間に上限がない状態で、長期的に日本で就労可能です。

技能実習と特定技能は混在しやすい在留資格ですが、それぞれ異なる点は多いです。以下では、技能実習と特定技能の違いを紹介しているため、参考にしてみてください。

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特定活動「EPA介護福祉士・候補者」

EPA(経済連携協定)は、日本がインドネシアやフィリピン、ベトナムなどと結んだ、政府間協定に基づく人材受け入れを前提として作られた在留資格です。

それぞれの国で介護関連の基礎を学んだ人材が来日し、特定の介護施設で就労しながら日本語研修や試験対策を受け、介護福祉士国家試験の合格を目指します。

在留期間は最長4年と定められており、在留期間内に合格できなかった場合は帰国しなければなりません。在留期間中に合格できた場合は在留資格が候補者から「EPA介護福祉士」に切り替わり、引き続き日本で就労可能です。

猪口 裕介

合格基準点の5割以上を取得できていて不合格の場合は、在留資格を「特定技能」に変更して最長5年間まで就労しながら再受験できます。

在留資格を変更した後に介護福祉士に合格した場合は、EPA介護福祉士ではなく在留資格「介護」に切り替えることで日本に引き続き在留可能です。

介護分野で働ける在留資格の違いとは?【比較表あり】

汎用

それぞれの資格はどのような点で異なるのかを、以下4つの観点から解説します。

在留資格ごとに異なる点
  • 取得人数
  • 取得要件
  • 在留期間
  • 家族帯同の可否

具体的にどのような点が異なるのかを、見ていきましょう。

取得人数

在留資格在留者数
在留資格「介護」9,328人
技能実習14,751人
特定技能28,400人
特定活動「EPA介護福祉士・候補者」3,186人

参考:厚生労働省|外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について

介護福祉士国家資格が必須条件の在留資格「介護」の取得者は、2023年12月時点では9,328人です。

技能実習は開発途上国の多くの若者に門戸が開かれている制度であるため、技能実習は応募者が非常に多い傾向にあります。2024年6月末時点では14,751人の外国人が介護の技能実習生として在留資格を取得し、日本に在留しています。

特定技能は試験合格で比較的早く就労を開始できため、技能実習からの移行なども相まって増加傾向が見られる在留資格です。

2023年12月末時点では28,400人が特定技能で在留しているデータからも、特に介護業界で働く外国人労働者は特定技能が多いことがわかります。

EPAは政府間の交渉により受け入れ枠が決められるため、受け入れ人数が4つの資格の中でもっとも少ない在留資格です。2024年3月時点では3,186人が受け入れられています。

取得要件

在留資格主な取得要件
在留資格「介護」
  • 国家資格「介護福祉士」の受験・取得
  • 日本語能力試験N2以上、日本留学試験の日本語科目で200点以上取得、BJTビジネス日本語能力テストで400点以上取得のいずれかの合格
  • 介護施設との雇用契約
  • 日本人と同等以上の報酬
技能実習
  • 送り出し国であるインドネシア・フィリピン・ベトナムいずれかからの推薦
  • 日本語スキルは1年目(入国時)はN3程度が理想的であり、N4程度が要件
  • 2年目からはN3程度が要件
  • 国家資格不要
特定技能
  • 介護技能評価試験合格
  • 日本語能力試験N2レベル以上または日本語基礎テスト合格
  • 介護日本語評価試験合格
特定活動「EPA介護福祉士・候補者」共通
  • 在留中の国家資格「介護福祉士」受験・合格
  • 病院または介護施設での研修経験
フィリピン・インドネシア
  • 介護研修経験/日本語能力試験N5以上
ベトナム
  • 介護研修経験/日本語能力試験N3以上

参考:厚生労働省|外国人介護職員と一緒に働いてみませんか?
参考:厚生労働省|インドネシア人看護師・介護福祉士候補者 令和元年度受入れスキーム
参考:出入国在留管理庁|「特定技能外国人受け入れる際のポイント」

在留資格「介護」は、日本の介護福祉士国家試験に合格するだけではなく、国際交流基金日本語基礎テスト日本語能力試験N2レベル以上などの合格も必要です。

また、日本国内の介護施設などと雇用契約を結ばなければいけません。取得要件が多くハードルは高く、実務上に必要な高い日本語力も求められる在留資格です。

技能実習は基本的に国家資格が不要であり、送り出し国からの推薦や日本語の基本的なコミュニケーション力があればスタートできる点が特徴です。

特定技能は、以下すべての試験に合格しなければ、就労は許可されません。

特定技能で合格すべき試験
  • 介護技能評価試験
  • 国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験N4以上
  • 介護日本語評価試験

EPAはどの国出身でも介護研修経験が必須ですが、国ごとに求められる日本語レベルの水準は異なります。

たとえばフィリピン・インドネシアでは、カタコトで話せるような日本語能力試験N5程度以上の日本語スキルがあれば、EPAの要件を満たします。

しかし、ベトナムでは同じEPAでも日常会話レベルであるN3以上に合格しなければいけません。

どの国からの来日であってもEPAは介護関連の基礎学習が前提となり、来日後は介護福祉士国家試験の合格をゴールとしながら施設で働きます。

在留期間

在留資格在留期間更新・延長の可能性
在留資格
「介護」
5年、3年、1年、3ヵ月のいずれか更新回数の制限なし、永続的な在留が可能
技能実習最長5年まで1号から3号まで段階的に移行、5年経過後は原則帰国
特定技能通算5年まで 5年経過後は原則終了。ただし介護福祉士資格取得で在留資格「介護」へ変更可能
特定活動「EPA介護福祉士・候補者」 最大4年

  • EPA介護福祉士候補の間は在留年数上限が4年

  • 介護福祉士試験に合格して活動内容が「EPA介護福祉士」に切り替わったあとは、在留年数の上限無しで更新可能

参考:厚生労働省|外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック
参考:厚生労働省|外国人介護職員を雇用できる4つの制度を比較してみましょう

在留資格「介護」の在留期間は5年・3年・1年・3ヵ月のいずれかで更新可能です。ほかの在留資格とは異なり、在留資格「介護」は更新回数や在留可能年数などの制限がありません

技能実習は1号・2号・3号と段階を経て最長5年まで滞在可能です。5年以上延長して就労はできないため、原則として帰国する必要があります。

特定技能は最大5年間の在留が認められており、原則として5年を過ぎた後は延長できません

ただし、在留期間中に介護福祉士を取得して要件を満たせば、在留資格を特定技能から在留資格「介護」に変更して引き続き日本に在留可能です。

EPA介護福祉士候補は最大4年の在留期間の中で、介護福祉士試験に合格しなければいけません。

在留期間中に合格できなかった場合は原則として帰国となりますが、合格すれば活動内容が「EPA介護福祉士」に切り替わり、引き続き日本で就労できます。

家族帯同の可否

在留資格家族帯同備考
在留資格「介護」配偶者と子どもに「家族滞在」ビザで在留できるため、帯同可能
技能実習×研修制度のため家族帯同は不可
特定技能×単身赴任が前提のため、家族帯同は不可
特定活動「EPA介護福祉士・候補者」

  • 介護福祉士合格前は家族帯同が不可

  • 合格後に活動内容が「RPA介護福祉士」に切り替わったあとは家族帯同が可能

参考:厚生労働省|在留資格「介護」
参考:法務省|特定技能制度に関するQ&A
参考:厚生労働省|外国人介護職員を雇用できる4つの制度を比較してみましょう

在留資格「介護」は家族帯同が許可されますが、ほか3つの在留資格では原則として家族帯同が認められていません

EPA候補者は、技能実習や特定技能と同様に、介護福祉士試験合格まで家族帯同は許可されていません。ただし、介護福祉士に合格して活動内容がEPA介護福祉士に変更されたあとは家族帯同が可能です。

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また、介護業界では技能実習から特定技能への切り替えや、国家資格不合格のEPA候補者による特定技能への変更など、在留資格の切り替えが珍しくなく、事務処理が多くなりがちです。

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在留資格「介護」に関するよくある質問

Q&A


最後に、在留資格「介護」に関するよくある質問と回答を紹介します。

外国人の「介護福祉士」合格率は?

厚生労働省が公開している資料「介護福祉士国家試験の受験者・合格者の推移」によると、近年の外国人受験者の合格率は、以下のように年々上昇傾向にあります。

  • 第31回(平成30年度実施):約30%
  • 第32回(令和元年度実施):約35〜36%
  • 第33回(令和2年度実施):約37〜38%
  • 第34回(令和3年度実施):約40%
  • 第35回(令和4年度実施):約40%強

参考:厚生労働省|介護福祉士国家試験の受験者・合格者の推移

とくに、近年は5年間で合格率が約10%ほど上昇しました。

日本語学習支援や研修体制などの充実により、しっかり対策をおこなえば外国人でも介護福祉士の合格を狙える環境が整備されています。

介護の在留資格から永住権を取得できますか?

在留資格「介護」で働き続けて日本での在留実績を積めば、将来的な永住権取得に有利に働きます。

一般的に永住権取得には10年間の在留が必要とされており、うち5年以上が就労ビザであれば審査対象になり得るため、在留資格「介護」での長期勤務は永住権取得を後押しする理由になります。

介護の在留資格で職場の転職は可能ですか?

在留資格「介護」は、名前のとおり介護福祉士として就労するための在留資格のため、同一の業務内容であればほかの施設や事業所へ転職可能です。

転職先が介護福祉士の業務として適切な受け入れ体制を整えていれば、要件を満たす限り転職自体に問題はありません。

技能実習は原則として転職が認められていません。

ただし、技能実習制度をベースに作られた2027年から導入予定の「育成就労制度」では、やむを得ない場合は職場の変更を認めるように改善される予定です。

特定技能においては、転職先企業にサポートしてもらいながら、在留資格の変更許可申請をおこなう必要があります。

審査に通れば転職可能ですが、審査中は転職先企業でアルバイトやパート勤務などができない点に注意してください。

EPA候補者においても、介護福祉士取得前の転職が原則として認められていません。しかし、介護福祉士に合格した後は、在留資格の変更許可申請さえ通れば転職可能です。

介護の在留資格を更新するときの方法を教えてください

在留期限が近づいたら、満了の約3か月前から出入国在留管理局で更新申請をおこないます。

基本的には以下4つの必要書類を揃えて提出すると1〜3ヵ月ほどで審査が完了します。

  • 在留期間更新許可申請書:1通
  • カードに表示する証明写真:1枚
  • パスポートおよび在留カード
  • 住民税の課税(または非課税)証明書および納税証明書:各1通


参考: 出入国在留管理庁|在留資格「介護」

なお、介護業界内で転職してからはじめて更新する際は、労働条件通知書や転職先企業の概要が記載された文書なども提出しなければいけません。

在留資格「介護」の種類や取得方法を知って自社にあった外国人を採用しよう

汎用

外国人が介護業界で就労する際、在留資格として利用できるものは以下の4つです。

  • 在留資格「介護」
  • 技能実習
  • 特定技能
  • 特定活動「EPA介護福祉士・候補者」

4つの在留資格はそれぞれ目的や在留可能期間、対応可能業務などが異なります。

外国人労働者の雇用を検討するのであれば、それぞれの在留資格は何が違うのかをきちんと理解したうえで、自社の現場に合った外国人雇用を進めましょう。

しかし、いざ進めようとしても「どの在留資格をもつ外国人を採用すれば良いかわからない……」と思う方もいるでしょう。このように悩んだときは、ぜひ「日本料飲外国人雇用協会」にご相談ください。

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監修者プロフィール

猪口裕介
猪口裕介一般社団法人 日本料飲外国人雇用協会  理事 兼 事務局長
外食業に特化した求人媒体を運営する人材支援事業会社にて、約20年間に渡り首都圏版メディアの立ち上げや事業責任者として従事。専門学校・短大にて就職セミナー講師としても20校以上の活動経験あり。2019年に特定技能制度の施行開始にあたり、登録支援機関の立ち上げとして「日本料飲外国人雇用協会」に参画。現在は理事 兼 事務局長として活動を所掌している。
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